開催概要
陶石の島から、陶磁器の島へ
天草陶磁器の島づくり協議会 会長 金澤一弘
天草大陶磁器展は、コロナ罹患者の増加で昨年度は開催できなかった。その前年もコロナ禍下での開催だったので、今年を含めると3年間、コロナの影響を受けたことになる。新しく地上に現れた病は、これほどまでに自分たちの生活を変えてしまうのかと感じている。コロナが今年で仕舞になるわけもなく、おそらくこれからも距離を取りつつ共存関係を模索することになるのだろう。今年はインフルエンザも大流行するかもしれないと、テレビで識者が警鐘を鳴らしているが、識者とは悪い連想を絶え間なく流す人かもしれないと思うのは、私だけだろうか。こういう時期は焦らず騒がず、まだ見えぬ未来に光を當て考えてみてもいいのではないか。そんなことを思いながら「準備万端」抜かりなく進めてきた。沢山の来場者を想定し準備を進めることは、万全を求められることで、それはそれ楽しい企てでもある。
陶磁器の島づくり事業を始め二十数年経つ。陶磁器の島づくりの目的は ?・・・とよく聞かれる。いろいろな答えがあると思うが、私は単純に天草で焼物を作り、生業とする人が増えていくことだろうと思っている。大きな産業を想像する人もいるかもしれないが、私は産業規模としては小さいものを想定している。1,000人の大企業を作ることは難しいと思うが、200人の陶芸家が作品を作る島を作ることは可能ではないか、そのほうが天草にとってインパクトが大きいと思う。陶芸は人類の非常に近いところに存在した職業なので、建築や装飾、外装用の煉瓦や生活雑器、湯茶や花生けなど、人々の暮らしと多種多様な結びつきがある。資本に乏しい小さな島だから、資本力によらない、多様な方法で手をつなぐことで、力を発揮できる小さな産業を、作り上げるべきだと思っている。
天草における陶芸活性化の事業・・・今までに何度もあるが、今回は西暦2000年の県民文化祭より始まる。ゲストは誰が良いかと陶芸部門の専門委員だった私に相談があったので、様々な人を検討した上で、日比野克彦氏をお願いすることにした。陶芸イベントの一環としてシンポジウムがあり、天草陶石という固有で素晴らしい資源を持つ天草を、「陶石の島から、陶磁器の島へ」という産業化へという住民決議があり、以来継続して産地化の可能性に挑み続けている。日比野氏にも毎年天草へ来ていただき、様々なアドバイスを頂いてきた。日比野氏は今年の4月に東京藝術大学の学長に就任され、陶芸にアートをどう組み入れていくのかについて、これからも様々な意見やご教授をいただきたいと考えている。
何かが少し動き始めている。天草の人が産地化の行く末を見え始めている。島の外の人が天草の陶芸を楽しみに眺め始めている。天草の若い陶芸家が天草の陶芸の未来に希望を持ち始めている。未来に目を向けて今を創るときが訪れつつある。2年ぶりの天草大陶磁器展が皆様に天草の未来を指し示すことができれば素晴らしいと思う。
- 1.目 的
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天草地域は古くから全国でも有数の陶石の産出地として知られ、陶磁器関係者の間では知名度が高く、陶石といえば天草陶石を指すほどの陶磁器原料である。
平成12年度に開催された第13回県民文化祭「ミレニアム天草」における国際陶芸シンポジウムにて「陶石の島から陶磁器の島へ」と題した決議文が採択されて以来、平成13年度からの3年間において「陶芸のまちづくり事業」を実施し、平成15年からは、国の伝統工芸品の指定を受けた「天草陶磁器」の知名度の向上、天草ブランドとしての確立、陶磁器産業の振興を目的に天草大陶磁器展を開催し、地元陶芸家の人材育成を行ってきた。 - 2.主 催
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天草陶磁器の島づくり協議会・天草市
- 3.会 期
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2022年11月2日(水)〜 6日(日)
9:30〜17:00(最終日6日は16:00まで) - 4.会 場
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天草市民センター 体育館ほか
- 5.内 容
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天草島内を中心に熊本県内の伝統的窯元から若手陶芸家による展示即売と熊本県外の陶芸家の作品を依託展示販売する。